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皆様こんにちは。ソブリンハブ の江村です。
本日は、20世紀英国を代表するコイン肖像「ギリックソブリン」を生み出した彫刻家、メアリー・ギリックについてご紹介します。彼女のデザインがなぜ発表から70年以上経った今も人々を魅了し続けるのか。そして、2025年にロイヤルミントが発表した“復刻版”5ポンド金貨の意義とは何か-最新の事実関係に基づいて整理します。
はじめに:アンティークコイン史上屈指の女性彫刻家
メアリー・ギリック(Mary Gaskell Gillick, 旧姓Tutin)は、英国コイン史において特別な地位を占める女性彫刻家です。彼女が手がけた若きエリザベス2世の無冠の肖像は、1953年から1970年まで英国コインで用いられ、コモンウェルス諸国にも広く採用されました。なかでも市場人気の高い金貨群が、通称ヤングヤングソブリンと呼ばれる「ギリックソブリン」です。
メアリー・ギリックという人物
1881年、イングランド・ノッティンガム生まれ。若くして彫刻の才を示し、ノッティンガム美術学校やロイヤル・カレッジ・オブ・アートで学びました。主に肖像メダルや記念メダルを手がけ、写実と優雅さを兼ね備えた作風で評価を確立。1950年代初頭、英国の新しいコイン肖像を決める歴史的な機会が到来します。
エリザベス2世の肖像制作秘話
1952年の即位に伴い、ロイヤルミントは17名の彫刻家を招いて新肖像のコンペティションを実施。71歳だったギリックは、伝統を踏まえつつも大胆な提案で挑みました。
革新的なデザインアプローチ

- 王冠なしの若き女王像:気品と清新さを併せ持つ無冠の横顔
- 月桂樹のリース:古典古代を想起させる勝利・栄誉の象徴
- 髪の流れの繊細表現:生命感と優雅さを両立
この「王冠なし」は当時としては異例でしたが、RMAC(王立造幣局諮問委員会)の審査と女王の承認を経て、ギリック案が採用されました。
ギリックソブリンの誕生と年表
ギリック肖像が施されたソブリンの年表を、誤解の多い点を踏まえて簡潔に整理します。
- 1953年:戴冠記念のためごく少数のプルーフ・セット(試鋳貨)が作られました。一般頒布のソブリンはありません。
- 1957年〜1968年:一般頒布が再開。これらが市場で通常「ギリックソブリン」と呼ばれる主力年号です。※1960・1961年は発行がありません
- 1970年:プレデシマル最終年のプルーフセットでも、表面はギリック肖像(月桂冠)が用いられています(十進化の新コインは1968年から通称ヤングエリザベスと呼ばれるMachin肖像)。
ギリックデザインの特徴と魅力

ギリックの肖像は、単なる似姿を超えて若き女王の威厳と優美さを表現します。月桂リースの象徴性、髪の流れ、文字と肖像のレイアウトの均衡など、造形・書体・余白の三位一体設計が最大の魅力です。
- 文字配置(DEI GRATIA等):クラシックで端正なリズム
- リースの結び目:リボンの流麗な結節表現
- 首〜肩のライン:しなやかな輪郭と陰影
なぜギリックソブリンは人気なのか
1. 供給の限界
1960年・1961年の発行はありません。 一般頒布は1957〜1968年の10年と限定的。 年号別の発行枚数や保存状況の差が希少性を左右します。
2. 高い芸術性
クラシックでありながらモダン。コレクションとして「所有する喜び」が強いデザインです。
3. 歴史的意義
エリザベス2世の最初期の公式肖像としての価値、また女性彫刻家による採用という社会的意義。
4. グレード差による価格乖離
同一タイプでも保存状態やEye Appealで価格は大きく変動します。一般論としては、グレードが上がるほどプレミアが増すと理解すると安全です(最上位級ほど希少)。
2025年発表の復刻版£5金貨について
ロイヤルミントは2025年に「Portraits of a Queen」シリーズを発表。ギリック肖像をリマスターした5ポンド金貨(いわゆるクインタプル・ソブリン相当、約39.94g)などがラインアップされ、コイン年号は2026(エリザベス2世生誕100年)となっています。
この復刻はオリジナルの価値を損なうものではなく、ギリック肖像への関心を喚起し、市場全体の理解と裾野を広げる効果が期待されます。
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ソブリン(金貨)
- 1957年:一般頒布再開の初年。人気が高い。
- 1968年:ギリック肖像期の最終年号。
- 1953年プルーフ・セット内ソブリン:極少量。市場流通は稀少。
- この他非常に希少な特別鋳造貨が存在する:プルーフでもマットでもなく、サテン仕上げで打刻もメリハリがよりはっきりと鋳造されており非常に上品で特別なソブリン。
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滅多に市場に出ないギリックソブリン金貨 SP67戴冠記念の関連貨
- 1953年クラウン(5シリング):表面はギルバート・レッドワードによる騎馬女王像。ギリック肖像ではないが、同年記念の中核的存在。
プルーフの扱い
年号・造幣技術・個体差で希少性は変動します。評価はグレード(MS/PF)・目視の魅力(Eye Appeal)・打刻・トーン等を総合判断しましょう。
メアリー・ギリックが残した遺産
女性芸術家としての先駆性
男性優位だった時代に、国の顔となるコイン肖像を勝ち取ったことは、後続の女性芸術家に道を拓いた快挙でした。
コインを“芸術”へ引き上げた功績
ギリックの仕事は、コインが通貨であると同時に芸術作品であることを広く示しました。その簡潔で気品ある造形理念は、現代のコインデザインにも影響を与え続けています。
まとめ:時代を超えて愛される芸術作品
- 正確な年表:1953年は極少量のプルーフ・セット(一般頒布なし)。一般頒布は1957〜1968年。
- 造形上の革新:無冠の若き女王・月桂リース・流麗な髪。
- 市場評価の要点:供給制約・芸術性・歴史的意義・グレード差。
- 最新トピック:Royal Mintが2025年にシリーズを案内開始。初弾はギリックの“First Effigy”、コイン年号は2026年(エリザベス2世生誕100年)が関心を再燃。発行枚数は150枚のみとなっており、今後の需要が高まることが予想される。
アンティークコインを投資対象としてだけでなく、歴史と美の結晶として捉えるなら、ギリック肖像はその代表格。メアリー・ギリックが残した輝きは、これからも色あせることはありません。