イギリスコイン市場で成功する交渉術:現地ディーラーから学ぶ「買う意思」の伝え方
こんにちは、ソブリンハブの江村です。今回は、アンティークコインやモダンコインを探す際の交渉術についてお話しします。特に、自分が欲しいコインが市場に出ていない時、ディーラーやコレクターとどのように交渉を進めれば、コインが見つかりやすく、お得な価格で購入できるのか。イギリス現地での14年の経験から得た知識を、惜しみなくお伝えしたいと思います。
目次
イギリスと日本の交渉文化の違い

私は日本のお客様とイギリスのコレクター、ディーラーの間に立って交渉することが頻繁にあります。その中で、両国の文化の違いによるギャップを肌で強く感じています。
ここで強調しておきたいのは、日本が悪い、イギリスが悪いということではありません。お互いの違いを理解した上で交渉を進めることが重要なのです。私はその間に立って、双方が歩み寄れるような潤滑剤の役割を果たしたいと考えています。
今回お話しする内容は、この文化の違いを踏まえた上での実践的なアドバイスです。これを知っているかどうかで、交渉の成否が大きく変わってきます。
交渉が失敗する典型的なパターン

まず、交渉がうまく進まない典型的なパターンからお話ししましょう。これを理解することで、なぜ特定のアプローチが効果的なのかが見えてきます。
失敗例:値段だけを追い求める交渉
例えば、あなたが欲しいコインが見つかったとします。私が知り合いのディーラーAさんやコレクターBさんに「このコイン持っていませんか?」と尋ねたところ、「持っているよ」という返事がありました。
ここからが重要です。多くの方がやってしまいがちな失敗パターンは以下のようなものです:
私:「いくらだったら買えますか?」
イギリス人ディーラーAさん:「100万円だったら譲ってもいいよ」
私:「もっと安くなりませんか?」
イギリス人ディーラーAさん:「じゃあ95万円ではどうですか」
私:「いや、もうちょっと安くなりませんか?」
このやり取り、何が問題だと思いますか?値段を安く買おうとしていることが問題ではありません。実は、値段ではなく、意思の問題なのです。
なぜこの交渉方法は嫌われるのか
この交渉で私は、一度も「買う」という意思を明確に示していません。相手に値段を出させてばかりで、自分は「いくらだったら買います」という購入意思をはっきりと示していないのです。
これが、イギリス市場で最も嫌われる交渉パターンです。95万円より安く買えたかもしれないのに、「もうちょっと安くして」と言ってしまったことで、交渉が決裂してしまうことがあります。
イギリスのディーラーやコレクターは、購入意思を示さない人を「時間の無駄」と考える傾向があります。コインフェアやコインショーで、テーブルを回って「これいくら?」と値段だけを聞いて回り、結局買わない人が多いため、本気で買う気のない人には対応したくないという心理が働くのです。
私の失敗体験
実は、これは私自身がイギリスでコインを買い始めたばかりの頃にやってしまった失敗です。「もうちょっと安くならない?」「もうちょっと安くならない?」ととにかく聞きすぎて、「もう売らないよ」と言われてしまったのです。
高価な金貨を買おうとしているお客なのに「売らない」と言われるなんて、当時は想像もしていませんでした。しかし、これがイギリス市場のやり方なのだと、肌で感じた経験でした。
成功する交渉パターン:購入意思を明確に示す

では、どうすれば交渉が成功するのでしょうか?先ほどの例を、成功パターンに書き換えてみましょう。
私:「いくらだったら買えますか?」
イギリス人ディーラーAさん:「100万円だったら譲ってもいいよ」
私:「85万円だったら買いたいです。85万円ではどうでしょうか?」
イギリス人ディーラーAさん:「85万円は難しいけど、90万円ならどう?」
このように、具体的な金額と「買いたい」という明確な意思を示すことで、交渉は全く違う展開になります。相手は「この人は本気で買う気がある」と理解し、「じゃあ85万円でいいよ」と応じてくれたり、別の価格を提示してくれる可能性が高まります。
前者の失敗パターンでは、相手を怒らせてコインが買えませんでした。後者の成功パターンでは、最初に提示された100万円より安い90万円でコインを購入できたわけです。
コレクターとの交渉の特殊性

交渉相手がディーラーだけとは限りません。コレクターとの交渉は、さらに特殊なアプローチが必要です。
コレクターは「売りたくない」人たち
コレクターの多くは、基本的に自分のコレクションを売りたいとは思っていません。そのような方から譲っていただくわけですから、私たちは「頭を下げてお願いする」立場にあるのです。
「いくらだったら売ってもらえますか?」と聞いても、コレクターからは「値段は出したくない。逆にいくらだったら買ってくれるの?」という質問が返ってきて、そこで交渉が終わってしまうことがよくあります。
効果的な交渉の進め方:5つのステップ

ここからは、私が推奨する具体的な交渉ステップをご紹介します。
ステップ1:欲しいコインの詳細を明確にする
まず、どのコインが欲しいのかを具体的に伝えます。年号、種類、デザインなどを明確にしましょう。
ステップ2:希望するグレードを伝える
鑑定会社(PCGSやNGCなど)のグレードで、どのレベルのものが欲しいのかを明確にします。
- MS63しか欲しくない
- MS64以上が欲しい
- PR70のみを探している
など、具体的に伝えることが重要です。
ステップ3:予算を提示する
これが最も重要なステップです。「予算はいくらまで出せます」と明確に伝えることで、購入意思が相手に伝わります。
もちろん、その予算の中でできれば安く抑えたいという気持ちは当然です。実際、私がお客様から予算をいただいてコインを探した際、予算より安く見つかったケースも何度もあります。
逆に、「申し訳ありません、予算内では見つかりませんでした。○○万円だったらあります」という提案をしたこともあります。どちらのケースでも、予算を明確にしていたからこそ、交渉が成立したのです。
ステップ4:相手の反応を待つ
予算を提示した後、相手が「その値段だと厳しいな」と言っても、購入意思を示しているため、相手は嫌な顔をしません。
ここから「じゃあいくらだったら?」という交渉が始まります。この段階での価格交渉は、相手も前向きに対応してくれます。なぜなら、あなたが本気で買う意思を示したことで、相手もちゃんと話を聞いてくれる姿勢になるからです。
ステップ5:粘り強く交渉する
購入意思を示した後の価格交渉は、時間がかかっても問題ありません。じりじりと交渉が続くことに関して、嫌がる人はほとんどいません。
この交渉術の隠れたメリット

この交渉方法には、価格面以外にも大きなメリットがあります。それは、市場に出てこないコインも引き出せるという点です。
非公開コレクションへのアクセス
コレクターは基本的に売りたくないため、市場に出てこないコインが数多くあります。しかし、「このコインを探していて、あなたが持っているそのコインが欲しいのですが、いくらで譲っていただけませんか?」と明確な購入意思と予算を示すことで、市場には出ていないコインも引き出すことができるのです。
これは、単に安く買うという以上の価値があります。他では手に入らない、希少なコインにアクセスできる可能性が広がるのです。
実践的なケーススタディ

具体例で考えてみましょう。
ケース1:1887年ジュビリーヘッドソブリンPCGS MS65を探している場合
悪い例:
「1887年のジュビリーヘッドソブリン持っていませんか?できるだけ安く買いたいんですが」
良い例:
「1887年のジュビリーヘッドソブリン、PCGS MS65以上のものを探しています。予算は100万円まで出せます。もしお持ちでしたら、譲っていただけませんか?」
良い例では、コインの詳細(年号、タイプ)、グレード(MS65以上)、予算(100万円)がすべて明確です。これにより、相手は真剣に対応してくれます。
ケース2:プルーフ5ポンド金貨を探している場合
悪い例:
「5ポンド金貨のプルーフ、何かいいのありませんか?」
良い例:
「2001年のヴィクトリア女王没後100周年記念5ポンド金貨、リバースプルーフでPCGS PR69以上を探しています。予算は80万円です。もし見つかりましたらご連絡いただけますか?」
明確な条件提示により、ディーラーやコレクターは具体的に探すことができます。
イギリス市場特有の文化的背景

なぜイギリス市場でこの交渉方法が重要なのか、文化的背景も理解しておきましょう。
時間の価値を重視する文化
イギリスのビジネス文化では、時間の価値が非常に重視されます。購入意思のない人との交渉は「時間の無駄」とみなされ、今後の取引にも影響します。
直接的なコミュニケーションを好む
日本では遠回しな表現が好まれることがありますが、イギリスでは明確で直接的なコミュニケーションが好まれます。「買いたい」と思っているなら、はっきりそう言うべきなのです。
誠実さと透明性
予算を明確にすることは、誠実さと透明性の表れとして評価されます。隠し事をせず、カードを最初から見せることで、相手も信頼して対応してくれます。
この交渉術が使える場面

この交渉術は、様々な場面で活用できます。
直接イギリスのディーラーやコレクターと交渉する場合
イギリスのコインフェアやオークション、あるいはオンラインで直接交渉する際に使えます。
日本のディーラーを通してイギリスコインを購入する場合
日本国内のディーラーに依頼して、イギリス市場からコインを探してもらう際にも有効です。ディーラーがイギリス側と交渉する際、あなたの明確な購入意思と予算があれば、交渉がスムーズに進みます。
オークションでの入札判断
オークションに参加する際も、予算を明確にしておくことで、感情的な入札を避け、計画的に参加できます。
交渉で避けるべき行動
最後に、交渉で避けるべき行動もまとめておきます。
1. 値段だけを聞いて回る
購入意思なく値段だけを聞いて回ると、「冷やかし客」とみなされます。
2. 予算を言わずに「安く」を繰り返す
具体的な数字なく「もっと安く」と繰り返すのは、最も嫌われるパターンです。
3. 曖昧な条件でコインを探してもらう
「何かいいコインありませんか?」という曖昧な依頼は、相手を困らせます。
4. 複数のディーラーで同じコインの値段を競わせる
適度な価格比較は問題ありませんが、あからさまに競わせるのは信頼を損ないます。
5. 決断を先延ばしにする
購入意思を示したら、合理的な期間内に決断することが重要です。
まとめ:成功する交渉の本質
イギリスコイン市場で成功する交渉の本質は、「買う意思」を明確に示すことです。
具体的には:
- 欲しいコインの詳細を明確にする
- 希望グレードを伝える
- 予算を明示する
- 誠実に交渉する
- 粘り強く対応する
この方法により、値段交渉がスムーズになるだけでなく、市場に出てこない貴重なコインにもアクセスできるようになります。
私がイギリスで14年間活動してきた中で学んだこの交渉術が、皆様のコイン収集に少しでも役立てば幸いです。文化の違いを理解し、適切な方法でコミュニケーションを取ることで、素晴らしいコインとの出会いが増えることを願っています。
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